●ライソゾーム病に対するスクリーニングの進歩状況
遠藤 ここ数年で、ライソゾーム病のスクリーニングはかなり方法が確立されてきて、広く浸透していったと思います。早期診断・早期治療の考え方も、同時にそれとともに浸透しているということですね。
中村 変化しています。
遠藤 それと今、中村先生はSMA1 型とSCIDの話もされましたが、この前、実はヨーローパ先天代謝異常症学会(SSIEM:Society for the Study of Inborn Errors of Metabolism)の時に、ヨーロッパやアメリカの何人かの人が、SCIDのスクリーニングは必ず浸透していくとおっしゃっていました。SCIDをやるときにSMAも一緒にやった方が効率がいい。先天代謝異常の専門家の人たちが、そういう話をしていました。技術的には、同じDNAを増幅する検査なので、同じようにできるんだろうと思いました。
井田 今年、アメリカ先天代謝異常症学会(SIMD:Society for Inherited Metabolic Diseases)に行ってましたが、LSDのスクリーニングは結構議論が多かった印象でした。州によって一部クラッベ病などのスクリーニングをスタートしたが今はちょっと怪しくなってきており、事情は変化しているようです。アメリカの趨勢はどのような状況なのでしょうか。
中村 10州ぐらいが州のスクリーニングとしてやっていて、あとは準備しているとか、一部でやっているというのが10州ぐらい。州によって内容はかなり違います。ポンペ病とムコ多糖症Ⅰ型は結構実施しています。クラッベ病をやっているところが意外に多いのですが、治療法が今のところ骨髄移植なので、ハードルが高い治療になってしまっているという面もあるようです。ジム・ケリーでしたっけ、アメリカンフットボール選手がプロモーションしているということで、理解が進んでいて、みんなが必要だと思っているところもあると思います。
井田 アメリカでは政治家とか有名人が提唱すると、グーッと盛り上がることはよくありますね。
中村 ポンペ病の優先順位はアメリカでは非常に高く設定されているのですけれども、日本で調べていると、なかなか見つからないのです。アメリカと同じ物差しで、するしないを考えるのもまた違うのだろうと思います。
井田 そうですね。ジェネティック・バックグラウンドも違いますので、この分野はアメリカがゴールデンスタンダードみたいにはならないと思います。ポンペ病はかなり上になっていました。
遠藤 ポンペ病とSCIDというのが急に上に上がっていますね。
井田 SCIDも海外ではグーッと上がってきた感じでしたね。
遠藤 前田先生はもともと小児血液学ですね。
前田 SCIDが出てきたというのはおもしろいですね。
遠藤 SCIDのスクリーニングでDiGeorge症候群が見つかって、遺伝カウンセリングはどうするかという大きな、新しい課題がまた見つかっています。DiGeorge症候群の早期発見はそんなに必要ないのにという話もあります。あと、中村先生がALPを研究されているのは、これから治療法が出てきたらスクリーニングを検討しようという姿勢でいいのですね。ALD(副腎白質ジストロフィー)もアメリカの一部の州では推奨していますね。
中村 ALDも見つかった後の負担は非常に高いと思います。
遠藤 定期的にMRIを撮って、所見に異常がでたら、造血幹細胞移植を実施するという方針ですから、相当ハードルが高いですね。
井田 治療法がないとスクリーニング意義は薄れるし、治療の質も考える必要があるでしょう。BMTをやるということになると結構難しい部分があります。
遠藤 そうですよね。BMTをやらないといけないといっても、日本全国、全ての県でできるわけではないので、ちょっとハードルが高いです。
中村 ALDの場合、遺伝子治療がうまくいっています。あれが広まってくるとハードルが下がるのかと予想します。
井田 そう思います。治療法の進歩はスクリーニングの対象疾患に大きく影響すると思います。酵素補充療法が確立し、今後、遺伝子治療が出てくれば、ALDやMLDも予後は今よりよくなるかもしれません。
中村 変化しています。
遠藤 それと今、中村先生はSMA1 型とSCIDの話もされましたが、この前、実はヨーローパ先天代謝異常症学会(SSIEM:Society for the Study of Inborn Errors of Metabolism)の時に、ヨーロッパやアメリカの何人かの人が、SCIDのスクリーニングは必ず浸透していくとおっしゃっていました。SCIDをやるときにSMAも一緒にやった方が効率がいい。先天代謝異常の専門家の人たちが、そういう話をしていました。技術的には、同じDNAを増幅する検査なので、同じようにできるんだろうと思いました。
井田 今年、アメリカ先天代謝異常症学会(SIMD:Society for Inherited Metabolic Diseases)に行ってましたが、LSDのスクリーニングは結構議論が多かった印象でした。州によって一部クラッベ病などのスクリーニングをスタートしたが今はちょっと怪しくなってきており、事情は変化しているようです。アメリカの趨勢はどのような状況なのでしょうか。
中村 10州ぐらいが州のスクリーニングとしてやっていて、あとは準備しているとか、一部でやっているというのが10州ぐらい。州によって内容はかなり違います。ポンペ病とムコ多糖症Ⅰ型は結構実施しています。クラッベ病をやっているところが意外に多いのですが、治療法が今のところ骨髄移植なので、ハードルが高い治療になってしまっているという面もあるようです。ジム・ケリーでしたっけ、アメリカンフットボール選手がプロモーションしているということで、理解が進んでいて、みんなが必要だと思っているところもあると思います。
井田 アメリカでは政治家とか有名人が提唱すると、グーッと盛り上がることはよくありますね。
中村 ポンペ病の優先順位はアメリカでは非常に高く設定されているのですけれども、日本で調べていると、なかなか見つからないのです。アメリカと同じ物差しで、するしないを考えるのもまた違うのだろうと思います。
井田 そうですね。ジェネティック・バックグラウンドも違いますので、この分野はアメリカがゴールデンスタンダードみたいにはならないと思います。ポンペ病はかなり上になっていました。
遠藤 ポンペ病とSCIDというのが急に上に上がっていますね。
井田 SCIDも海外ではグーッと上がってきた感じでしたね。
遠藤 前田先生はもともと小児血液学ですね。
前田 SCIDが出てきたというのはおもしろいですね。
遠藤 SCIDのスクリーニングでDiGeorge症候群が見つかって、遺伝カウンセリングはどうするかという大きな、新しい課題がまた見つかっています。DiGeorge症候群の早期発見はそんなに必要ないのにという話もあります。あと、中村先生がALPを研究されているのは、これから治療法が出てきたらスクリーニングを検討しようという姿勢でいいのですね。ALD(副腎白質ジストロフィー)もアメリカの一部の州では推奨していますね。
中村 ALDも見つかった後の負担は非常に高いと思います。
遠藤 定期的にMRIを撮って、所見に異常がでたら、造血幹細胞移植を実施するという方針ですから、相当ハードルが高いですね。
井田 治療法がないとスクリーニング意義は薄れるし、治療の質も考える必要があるでしょう。BMTをやるということになると結構難しい部分があります。
遠藤 そうですよね。BMTをやらないといけないといっても、日本全国、全ての県でできるわけではないので、ちょっとハードルが高いです。
中村 ALDの場合、遺伝子治療がうまくいっています。あれが広まってくるとハードルが下がるのかと予想します。
井田 そう思います。治療法の進歩はスクリーニングの対象疾患に大きく影響すると思います。酵素補充療法が確立し、今後、遺伝子治療が出てくれば、ALDやMLDも予後は今よりよくなるかもしれません。
●スクリーニングと在宅医療の今後
遠藤 遺伝子治療の普及は、井田先生、そこはひとつ頑張ってください。前田先生、何か感想がございますか。
前田 在宅でやっているので、スクリーニングには、なかなか意識がいかないのですけれども、それぞれ専門医療があって、スクリーニングがあって、医療の全体像が成り立っている。当たり前のことですけれども、改めてそう感じました。
遠藤 前田先生がおっしゃったようなことを私もちょうど感じていました。前田先生と井田先生の話を一緒に聞きたいなと思って本座談会を企画しました。皆さんのお話しを聞いていましたら、それぞれの立場でそれぞれの難病に対峙しているというのを、私たちがまさに共有できた一日だったと思いました。
先ほど前田先生がおっしゃった、「それぞれの立場、専門性が違っても、みんなで一生懸命やってきた」というのを聞いて思うのですが、在宅医療の進歩は大きいですね。直接生命予後の改善につながっているでしょう。
井田 かなりつながっています。
遠藤 スクリーニングの研究は、それに比べるとまだまだですけど。
井田 歴史がまだ浅いので、これからだと思います。
遠藤 島津先生の、余っている病棟を生かしたレスパイト大作戦はすごいですね。
井田 非常にいいと思います。あれは小児医療のモデルになると思います。
遠藤 地域に根づいています。
井田 絶対にそうです。私はそれを進めるように以前から強調しています。しかし、幾つかの障壁があります。例えば、小児病棟になぜ成人が入院するのか、小児病棟の看護師がなぜ成人を診るのか、などです。
遠藤 井田先生と前田先生の、今までの診療上のネットワークは、大都会でも、やればできるじゃないかみたいな話でしたね。今まで東京はだめだとか、世田谷は難しいとかいろいろ言われていましたが、先生方のネットワークは、ちゃんと意思疎通がうまくいっている。大学病院と在宅医療のネットワークの1つのきれいな姿ですね。
井田 最後に中村先生の言われた「顔の見える医療」が大切なんです。前田先生とは顔が見える関係です。
今日もこうして直接お会いしていますが、それが信頼関係を構築するのにとても重要だと思います。
遠藤 今日はゴーシェ病の最先端治療の話から、最後は顔が見えないとだめだという話まで、本当に多彩なお話で、勉強になりました。どうもありがとうございました。
前田 在宅でやっているので、スクリーニングには、なかなか意識がいかないのですけれども、それぞれ専門医療があって、スクリーニングがあって、医療の全体像が成り立っている。当たり前のことですけれども、改めてそう感じました。
遠藤 前田先生がおっしゃったようなことを私もちょうど感じていました。前田先生と井田先生の話を一緒に聞きたいなと思って本座談会を企画しました。皆さんのお話しを聞いていましたら、それぞれの立場でそれぞれの難病に対峙しているというのを、私たちがまさに共有できた一日だったと思いました。
先ほど前田先生がおっしゃった、「それぞれの立場、専門性が違っても、みんなで一生懸命やってきた」というのを聞いて思うのですが、在宅医療の進歩は大きいですね。直接生命予後の改善につながっているでしょう。
井田 かなりつながっています。
遠藤 スクリーニングの研究は、それに比べるとまだまだですけど。
井田 歴史がまだ浅いので、これからだと思います。
遠藤 島津先生の、余っている病棟を生かしたレスパイト大作戦はすごいですね。
井田 非常にいいと思います。あれは小児医療のモデルになると思います。
遠藤 地域に根づいています。
井田 絶対にそうです。私はそれを進めるように以前から強調しています。しかし、幾つかの障壁があります。例えば、小児病棟になぜ成人が入院するのか、小児病棟の看護師がなぜ成人を診るのか、などです。
遠藤 井田先生と前田先生の、今までの診療上のネットワークは、大都会でも、やればできるじゃないかみたいな話でしたね。今まで東京はだめだとか、世田谷は難しいとかいろいろ言われていましたが、先生方のネットワークは、ちゃんと意思疎通がうまくいっている。大学病院と在宅医療のネットワークの1つのきれいな姿ですね。
井田 最後に中村先生の言われた「顔の見える医療」が大切なんです。前田先生とは顔が見える関係です。
今日もこうして直接お会いしていますが、それが信頼関係を構築するのにとても重要だと思います。
遠藤 今日はゴーシェ病の最先端治療の話から、最後は顔が見えないとだめだという話まで、本当に多彩なお話で、勉強になりました。どうもありがとうございました。