福岡の地政学的位置づけ
我々は福岡地区でファブリー病の新生児マススクリーニングを、熊本大学小児科の遠藤先生、中村先生のご協力を得て実施しております。その状況をご報告いたします。
福岡の人口は全体で510 万人、年間出生数は46,000 人です。ほかの政令指定都市に比べて、子どもの人口がまだ増えているところです。ファブリー病に関していえば、アジアの玄関口ということもあって、アジアの変異も多いのではないかと考えています。福岡市が政令指定都市で、北九州市も100 万を少し切っていますけれども政令指定都市で、福岡県には2 つの大きな市があります。あとは筑後地域に久留米市という大きな都市があります。
福岡地区における新生児マススクリーニングの概略
福岡地区におけるライソゾーム病の新生児マススクリーニングの概略をご説明します。
まず、産科で両親に同意を得て、採血をして、これがポイントですけれども1 枚のろ紙、タンデムマスで残ったろ紙をライソゾーム病の新生児マススクリーニングに利用することが非常にメリットになっています。採血が1 回で済むというのが非常によいのではないかと思っています。
検査センターや産科の先生とも連携をとりながら行っておりまして、我々のところに陽性の赤ちゃんが来た場合に、精密検査をして診断を確定したり、フォローアップ、治療と進めます。遺伝カウンセリングや啓蒙活動も行っています。
新生児スクリーニングの結果

2014 年4 月~ 2017 年4 月までの集計によると、5 万1000人の対象に対し、GLA 活性低値例が1 人/4500 人。再検査で遺伝子検査まで行った結果、古典型は見つからず、遅発型3 例および新規変異3 例発見され、機能的多型(E66Q)が10 例、変異なしが4 例で、変異だけを見ると1 人/8500 人でした。大体1 人/1 万人位という気はしております。
ポンペ病のスクリーニング検査結果では、2017 年5 月時点ではポンペ病の赤ちゃんはまだ見つかっていません。

新生児マススクリーニングをきっかけに見つかったファブリー病の家系
新生児マススクリーニングをきっかけに見つかった家系を紹介します。この月齢6 の女児(Ⅳ-1)は酵素活性が少し低いということで来院されました。遺伝子検査の結果、台湾に多いIVS4-919G > A 変異が同定されました。家系を詳しく聞いてみると、父方の祖母(Ⅱ-2)が、原因不明の肥大型心筋症でペースメーカーを入れていました。家族歴で肥大型心筋症がきっかけで亡くなっている方、ペースメーカー、心疾患の方が何人かおられることが後から判明しました。家族に十分説明して、ご両親の検査、家系内の調査を行ったところ、父方祖母(Ⅱ-2)は同じ変異を有していまして、父親も同じ変異がありました。父方祖母は、たまたま福岡大学循環器内科にかかっておられまして、現在、酵素補充療法をするかどうかという話を進めているところであります。父親に関しても、当院内科を受診してもらい、フォローアップ中です。今のところ何も症状がないということで、治療には至っておりません。
その後、下のお子さん(Ⅳ-2. 女児)が生まれまして、今、検査中であります。生物学的には恐らく同様の遺伝子を有しているであろうと思っています。ただ、このご家族の皆さん、病気に対しての理解がすごくありまして、いっしょに注意深く観察しているところです。
新生児マススクリーニングの課題と展望
新生児マススクリーニングの課題を幾つか挙げてみました。
家族会との交流は重要
ファブリー病の家族会「ふくろうの会」の方は非常に熱心で、全国を回って交流会を行っています。九州地区では福岡大学医学部小児科 廣瀨伸一教授が世話人で、毎年春の時期に開催しております。多くの九州地区の患者さん、家族の方が参加して、活発な討論もされています。